◎ペストに拘る!(その2)
(承前)大貫論文の後半。
<人口停滞期に突入の欧州>結果としてヨーロッパは人口停滞期に突入。1370年代にかけて4度のペストの波。この繰り返しが歴史的に大きな意味。大貫さんは「問題の加速化」を強調する。<農村社会は13世紀末、人口飽和><食料増産は限界><社会は構造転換を必要とした>こうした前提の下、<ペストが構造転換を加速>と言うわけだ。
大貫さんは、イギリスを例示。<緩やかに上昇の農業労働賃金が14世紀半ばに急上昇、高止まりする>(農業危機の深刻化)。<(イギリス)王権が国外から技術者を呼び、(農村の)毛織物生産が一気に盛んになる。>大貫さんは、断言する。<この構造転換なくして、16世紀以降のイギリスの発展は考えられない。>
「問題の加速化」というとらえ方=コロナ禍を考える手立てだろうと言う。<諸問題は新型コロナが蔓延して突然降って湧いたのではなく、これまで見て見ぬふり・・・>
大貫さんの結論。<コロナを機に「世界の再定義」を丁寧に、><以前から積み残している諸課題を見つめ直すことが肝要>と結んでいる。
(感想:パンデミック・コロナ禍と徒に騒ぐのではなく、いまある「異常さ」に目を向ける必要もあろう。その好機かもしれない。)
◎ペストに拘る!(その1)
*コロナウイルス禍もあり、このところ「疫病」「ペスト」に関する文献・論文に拘っている。最近読んだものを示す。
①ウイリアム・H・マクニール、佐々木昭夫訳『疫病と世界史』㊤㊦(中公文庫2007/2020)
②村上陽一郎『ペスト大流行ーヨーロッパ中世の崩壊ー』(岩波新書1983/2020)
③ユヴァル・ノア・ハラリ『緊急提言 パンデミック』柴田浩之訳(河出書房新社2020)
④大貫俊夫「中世ペストのもたらしたもの 「大遷移」の時代 構造転換加速化した4度の波」(しんぶん赤旗、「学問文化」2020/09/08)
今回は、大貫さんの「論文」を紹介(文体は多少変更)。同氏は冒頭で「日本で中世ヨーロッパの歴史が話題になることはめったにないが、新型コロナウイルスが拡大するなか、この中世のパンデミックがしばしば取り上げられる」と慨嘆する。歴史家は釘を刺す。「歴史は大変複雑なもの。中世封建社会はたった1回のパンデミックで瓦解せず、キリスト教信仰はむしろ強まった」(変化は長いスパンで理解せよと)。/1270年頃、太陽の活動停滞期。ヨーロッパ各地で天候不順による飢饉、地震、蝗害、降雪。この環境でペスト菌がヨーロッパに到来。中世環境史家キャンベルは13世紀末~15世紀を「大遷移」の時代と呼んだ(14世紀半ばに大ペスト)。/中世史家の瀬原義生さんは「大黒死病は、大量死を招いたが、それ自体、顕著な永続的影響を残さなかったと述べる。」社会はそれほど脆弱ではなく、人口は自然の復元力により回復が見込めたのだ。(未完続く)
◎一郎の川柳近詠:「川柳展望」183号掲載句
*「川柳展望」季刊2020秋、NO.183 2020年11月1日発行
②ブロック自由吟
徳 島 一 郎(福岡)
・若作りもコロナウイルスにはお見通し
・コロナウイルス見えぬ匂わぬだがそこに
・良く噛むと入れ歯が軋む程々に
・ゆとりある年金暮し夢の夢
・パンデミックステイホームで様子見る
・しみったれマスク二枚が関の山
・原発にマネーじゃぶじゃぶ流し込む
・「死の勝利」パンデミックのめざすもの
・安倍さんは首相席でも飛ばす野次
・割り算は不得意ですね余り出る
前号③ブロック自由吟作品鑑賞 高田 桂
・コロナ不安安倍の怠慢下支え 徳島一郎
全く同感。一カ月程、記者会見全くしなかったのは怠慢なのか、どうしてよいか分からなかったのか、体調不良か。とにかく、まったく信頼できぬ国のリーダーで、呆れ果てている。だからお坊ちゃま総理はダメなのだ。
確かめる矢印 182号展望集作品鑑賞 ささきのりこ
・早とちり手抜かりもまた安倍の技 徳島一郎
安倍総理というか安倍内閣の技だろう。リオで土管に潜ったマリオは東京に出て来ることはできなかった。あの時の映像を使わないマスコミも、大したものではない。