世界史雑考

歴史学習

◎ペストに拘る!(その1)

コロナウイルス禍もあり、このところ「疫病」「ペスト」に関する文献・論文に拘っている。最近読んだものを示す。
①ウイリアム・H・マクニール、佐々木昭夫訳『疫病と世界史』㊤㊦(中公文庫2007/2020)
村上陽一郎『ペスト大流行ーヨーロッパ中世の崩壊ー』(岩波新書1983/2020)
③ユヴァル・ノア・ハラリ『緊急提言 パンデミック』柴田浩之訳(河出書房新社2020)
④大貫俊夫「中世ペストのもたらしたもの 「大遷移」の時代 構造転換加速化した4度の波」(しんぶん赤旗、「学問文化」2020/09/08)
今回は、大貫さんの「論文」を紹介(文体は多少変更)。同氏は冒頭で「日本で中世ヨーロッパの歴史が話題になることはめったにないが、新型コロナウイルスが拡大するなか、この中世のパンデミックがしばしば取り上げられる」と慨嘆する。歴史家は釘を刺す。「歴史は大変複雑なもの。中世封建社会はたった1回のパンデミックで瓦解せず、キリスト教信仰はむしろ強まった」(変化は長いスパンで理解せよと)。/1270年頃、太陽の活動停滞期。ヨーロッパ各地で天候不順による飢饉、地震、蝗害、降雪。この環境でペスト菌がヨーロッパに到来。中世環境史家キャンベルは13世紀末~15世紀を「大遷移」の時代と呼んだ(14世紀半ばに大ペスト)。/中世史家の瀬原義生さんは「大黒死病は、大量死を招いたが、それ自体、顕著な永続的影響を残さなかったと述べる。」社会はそれほど脆弱ではなく、人口は自然の復元力により回復が見込めたのだ。(未完続く)